ジャック・サマーズビー 愛に殉じた男

羊たちの沈黙で二度目のアカデミー主演女優賞を受賞し、乗りに乗っていたジョディ・フォスターの美しさが輝く。16世紀フランス、失踪した男になりすましてその男の家庭に入り込み、詐欺罪で訴えられ処刑されたマルタン・ゲール事件を下敷きに、舞台を南北戦争終結後のアメリカ南部に置いた映画。ご当地フランスではジェラール・ドパルデューとナタリー・バイ主演で映画化されている(たまたま聴いたミシェル・ポルタルによるテーマ音楽がドラマチックでよかった!セザール賞音楽賞を受賞している。)南北戦争に出征し、生死不明となっていた農園経営者のジャック・サマーズビー(リチャード・ギア)が6年ぶりに帰還する。死んだものと諦めていた妻のローレル(ジョデイ・フォスター)や周囲は困惑するが、以前は冷たい性格で嫌われ者だった彼が別人のように村人と協調し、ローレルに愛情を注ぎ、打ち解けていく。煙草を栽培して村を活性化しようと新機軸を打ち出したり、リーダーシップをとれるジャックをいつしか周囲は尊敬するようになる。しかし、ジャックのいない間にローレルと親しくなっていたオーリンは最初からジャックが偽物ではないかと疑っている。

子供も生まれ幸せな日々を送るジャックとローレル。しかし好事魔多し。ジャックは過去に喧嘩で人を殺した容疑で逮捕され、裁判にかけられる。ローレルには初めからジャックが偽物だとわかっていた。それが証明されれば(偽)ジャックの容疑は晴れる。法廷でローレルは、彼はジャック・サマーズビーではない、妻である私が一番よくわかる、なぜなら私は夫のジャック・サマーズビーをこんな風に愛したことはなかったからと切々と訴える。何者だかわからない愛する男を救いたい一心だ。このシーンのジョディ・フォスター忘れられない。知的でクールなイメージの彼女には珍しく平凡な主婦役でもさすがの演技。彼女の長いキャリアの中で、女性的な美しさが遺憾なく発揮されたという点ではこの作品が最高だったと思っている。しかし、(偽)ジャックはローレルに語る。南北戦争でジャック・サマーズビーと行動を共にし、多くのことを語り合った。その後ジャックは戦死する。それをきっかけに、今までの人生に嫌気がさしていた彼は、ジャックに成りすまして別の人生を生きてみようと思い立った。ジャックの情報はいやというほど頭に叩き込んでいる。幼い頃のエピソード、テネシー州の小さな村で農園を経営していたこと、妻と子供・・・意を決してジャックの語った村に行ってみると、美しい妻のローレルがいた。彼も最初からローレルに惹かれた。そんな彼の人生で、一番価値があったのはローレルを愛し、共に幸せな日々を送ったこと。だからその誇りを胸に、このままジャック・サマーズビーとして死にたいと。このリチャード・ギアも泣かせる。ジャックの罪は確定し、衆人環視の中、もちろんローレルも見守る中、絞首刑に処される。涙ぐんでしまった。

リチャード・ギアは若い頃のアメリカン・ジゴロの高級ジゴロ役もかっこよかったけれど、年を重ねて断然よくなった人。最近ではオランジーナのCMでアメリカ人寅さんを演じていい味出していたし (このCM、フランスの飲料の宣伝にアメリカ人俳優を起用して日本の国民的ヒーロー?を演じさせるって不思議なコンセプトだった。)数年前他界したやしきたかじんとその妻を小説化した”殉愛”という作品が物議を醸した話を聞いた時、真っ先にこの映画を思い出した。愛に殉じるとはまさにこの映画のリチャード・ギア。自分はジャック・サマーズビーではないと証明できれば、詐欺罪には問われても死刑は免れたはず。愛するローレルと子供のために生きることが真っ当だとは思うが、男の自負とは厄介なものでもあるのか。

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