卒業 美魔女に誘惑されるチェリーボーイが真実の愛に目覚めて

原題はThe graduate、大学を卒業した者。ストッキングを穿く女の美脚を見つめる若い男のポスターも印象的な、1960年代を代表するアメリカンニューシネマの一つ。ラスト、教会での花嫁略奪のシーンは映画史に残る。それを先日数十年ぶりに見返した。一般にホラーよりコメディの方が寿命が長いと言われるが、なるほど今回もまた笑ってしまった。まず、これぞ年増女(当世風に言えば美魔女か)が若者を誘惑するマニュアルだと言わんばかりの指南を披露するミセスロビンソン(アン・バンクロフト)。アンチエイジングがもてはやされる昨今ではああいうおばさんぶりが堂に入った女優は少ない。誘惑されたベン(ダスティン・ホフマン)がミセスロビンソンとの密会のために初めてホテルを予約するシーンも笑える。最近、アン・バンクロフトとダスティン・ホフマンが実年齢では6歳しか違わないことを知って驚いた。片や若い男を翻弄する熟女を演じ、片や大学を出たばかりのチェリーボーイを演じて全く違和感ないのだから、アメリカの俳優の底力を見せつけられる。

ミセスロビンソンに操られ、彼女の意のままに情事を重ねるベン。そこに彼女の娘でベンの幼馴染でもあるエレーン(キャサリン・ロス)が夏休みで帰郷して・・・この映画でキャサリン・ロスは全米の恋人と言われるほどの人気を得たそうだ。清純で聡明で可愛らしくて、みなが熱狂したのも頷ける。大学院への進学を控えるものの、確たる目標もなく情事に溺れる虚しい日々を送るベンは、両親のすすめでエレーンとデートする。素直になれず自暴自棄なベンはエレーンをからかってやろうとストリップに連れていく。そこで涙を見せるエレーンの健気で美しいこと。ベンはそんなエレーンに惚れてしまう。二人がデートでドライブしながらバーを探すシーン、この辺にバーなんかないよというベンにエレーンはXXホテルにあるわと言う。そこはベンがミセスロビンソンと密会していたホテルで、動揺したベンが運転を誤りとっさに縁石か何かに車を乗りあげてしまうのも笑えるエピソードだった。

ベンを失いたくないミセスロビンソンの奸計でエレーンはベンと母親のあるまじき関係を知り、傷ついてベンの許を去る。エレーンを愛していることに気づいたベンはエレーンを追うのだが・・・最初はおどおどして内気なベンが、エレーンへの愛を自覚するにつれて積極的で力強い男に変わっていく過程を見せるダスティン・ホフマンの演技がすごい。両親とベンの世代間の齟齬を描いた映画でもあり、最後、教会から逃走するベンとエレーンが飛び乗ったバスの乗客が全員老人なのも象徴的である。二人の未来が決して輝かしいものではないことを暗示しているのだろうか。また、触れないわけにはいかないのが音楽を担当したサイモンとガーファンクル。卒業と言えば反射的に浮かんでくる楽曲の数々が素晴らしい。爽やかながら哀切なScarborough fair、陽気なMrs. Robinson、味わい深い歌詞のThe sound of silence。特にThe sound of silence の、沈黙が癌のように広がっていくという詩が忘れがたい。不気味な内容を美声で歌っているところにも魅せられる。

 

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