世にも怪奇な物語 ロジェ・ヴァディムが描く禁断の恋

Gyaoで無料動画を見ていると、たまにえっと思うような懐かしい映画に出会ったりする。最近ではこの、エドガー・アラン・ポーの三作品を三人の監督が撮ったオムニバス映画・世にも怪奇な物語。初めて観たのがいつだったのか・・・当時はフェリーニによる第三話・Toby Dammitに出てくる少女の顔をした悪魔が怖くて、それが一番印象的だった。主人公を破滅へと導く、子供なのに既に堕落しているかのような、悦楽と悪の虜になっているような表情の女の子。まさにポーの世界の住人。

今回ももう一度あの女の子を見たくて映画を観たら、今度はロジェ・ヴァディムによる第一話のMetzengersteinに心を奪われた。当時の妻だったジェーン・フォンダを主役にした耽美的な作品で、ジェーン扮するのは莫大な財産を相続した伯爵家の令嬢・フレデリック。神をも恐れぬ傲慢な彼女はその取り巻きと共に放蕩の限りを尽くす日々を送っているが、従弟である男爵との出会いにより変化が訪れる。

フランス・ブルターニュ地方の古城が舞台で、その荒涼とした佇まいがもう雰囲気たっぷり。マイケル・ジャクソンのスリラーのナレーションでも有名なヴィンセント・プライスがここでも美声のナレーションを披露しており、全編を流れる感傷的な音楽と共に物語を盛り上げる。ジェーンは終始バーバレラ風の露出の多いセクシーな衣装で登場。自分の妻や恋人をスターにしていった手腕で有名なヴァディム、ジェーンの官能的な魅力を知り尽くしていたからこそだろう。森の中でキツネの罠にかかった彼女を偶然通りかかった従弟のウィルヘルム男爵が助けることになり、それで二人は意識し合うようになる。ウィルヘルム男爵は、フレデリックの伯爵家とは長年いがみ合う仲の、分家の中でも最も資産のない家の出。二人はいとこ同士とは言えそれまでお互いをよく知る機会はなかった。ウィルヘルムは才能豊かだったにもかかわらず興味を示したのは馬と狩猟だけで、社会には背を向けて孤高の姿勢を貫く男だった。

ウィルヘルム男爵役はジェーンの実弟であるピーター・フォンダ。彼といえば反射的にバイカーのバイブル・イージーライダーを思い出す向きは多いだろうが、私には何といってもこちら。長身痩躯で、湖の底のような目をしたピーター=ウィルヘルム。フレデリックは一目で恋に落ちる。あの目で見つめられたらたまらないだろう。実際の姉弟をキャスティングしているところが禁断の愛・近親相姦っぽい危うさを醸し出している。

 

その日以来、フレデリックは彼が忘れられず、馬を駆っては出会った場所や彼が現れそうな場所を彷徨う。憂愁に閉ざされた彼の面影を追うフレデリックの恋心が切ないシーン。城壁でフクロウと語り合うウィルヘルムを見つけ、フレデリックは呼び止める。傍にやってきた彼に、寒い、自分の家ではこんな時男がマントを貸すものだというと、彼は黙って自分のマントでフレデリックを覆う。愛しい男に寄り添う歓びで高鳴るフレデリックの胸の鼓動が聞こえてきそうだった。ウィルヘルムを食事に誘うフレデリックだが、ウィルヘルムは放埓な彼女を批判して拒否する。それが悲劇の始まり。プライドを傷つけられたフレデリックは、ウィルヘルムの厩舎に放火させる。ウィルヘルムは燃え盛る炎の中、愛する馬を救いに厩舎に入り、馬と共に命を落とす。フレデリックには予期せぬ出来事だった。さらに予期せぬことに、フレデリックの家に謎の漆黒の馬が現れる。ウィルヘルムの魂を担ったその馬にフレデリックは夢中になり、同時に死への誘惑にも憑りつかれる。

ジェーン・フォンダはヴァディムと別れてからアメリカに戻り、社会派映画で女優として名をあげる。アカデミー賞の主演女優賞を受賞した帰郷での演技など見事だった。でも個人的にはヴァディムと一緒にいたころの妖艶な彼女が好きだ。また、フランスの老舗美容サロン・CARITAが担当したジェーンのヘアスタイルの素敵なこと!もちろんブロンドのロング!驚くほどヴァディムの昔の恋人に似たショットもあり。。。ヴァディムって本当にブロンドが好きなのだと感心。ジェーンと交際する前の恋人であり、彼の子供も産んでいるカトリーヌ・ドヌーヴとの出会いの際には、”きみのブルネットも素敵だけれど、男と言うのはブロンドの女に夢を賭けるものなんだよ。きみはもっと美しくなりたくない?”と口説いたというエピソードがある。色々なタイプの美女との恋を楽しんだヴァディムだが、ブロンド好みの一点は終生ぶれなかったのか。

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