シェリーへの愛

もともと白ワインが好きで、そこからアルコール遍歴が始まったのですが、数年前からシェリーの虜になってしまいました。きっかけは、より度数の高いワインを求めてのことだったかと記憶していましたが、ほかにも理由がありました。1930年代のイギリスの名門校に寄宿する男の子たちを描いた映画、アナザーカントリーを数十年ぶりかで見ていたら、みなでシェリーを飲むシーンがあったのです。シェリーを世界に広めるのに大きな役割を果たしたというイギリス、上流階級ではシェリーを飲む文化が定着していたのですね。いかにも高級そうなカップボードにグラス、その調度品もとても素敵でした。それともう一つ。19世紀の米国人作家・エドガー・アラン・ポーの作品にアモンティリャードの樽というのがあります。積年の仇敵らしき男を、極上のアモンティリャードを飲もうと唆し、地下のシェリー貯蔵庫に連れ出して殺してしまう男の話。アモンティリャードとはシェリーの種類の一つです。カーニバルの最中の出来事で、殺された男は道化師の扮装のまま死んでいきます。鮮やかなイメージ。主人公がなぜ殺したいと思うほどの恨みを抱いたのかには触れられておらず、それが却って不気味な短編小説です。アナザーカントリーとアモンティリャードの樽が、シェリーに傾倒していくきっかけとなりました。

伊勢丹本店の年に一度のお楽しみ、世界を旅するワイン展には、毎年シェリーメーカーのエミリオルスタウが出展しますが、そこを訪ねて綺麗なベネンシアドールの女性にシェリーの説明を受けたりして、色々試しては楽しんでいます。フランスの第二帝政期に皇妃となったウジェニーという女性がいます。スカートを膨らませるクリノリンという釣り鐘型の道具を運ぶバッグをルイヴィトンにオーダーして、ヴィトンの知名度を一気に高めたということは知っていましたが、彼女はシェリーの歴史にも関わりを持っているのだそうです。詳しくは忘れてしまいましたが(残念)、ルスタウがウジェニーのラベルのシェリーを販売していました。ルスタウはベルモットも美味です。

シェリーは辛口から濃厚な甘口まで、どれを飲んでも外れがありません(個人的には)。夏はさっぱりフィノを飲む機会が多いですが、オロロソやモスカテル、ペドロヒメネス、クリーム、もちろんアモンティリャードも、これが一番!とは選びきれないくらい好きです。ペアリングも多岐に亘り、お刺身や冷やし中華なんかとも合わせられるのが凄い。ペアリングチャートも見ていて勉強になります。“樽の中の劇場”というシェリーの本は私のバイブルで、いつ読んでもうっとりします。シェリーって言葉の響きも好きです。上の写真は今年の2月末に開催された世界を旅するワイン展の模様ですが、これが一週間遅れていたら中止になっていたでしょうね。販売員の方もマスクを着用されていましたが、今年も行けて本当によかったと思っています。下はフランスのロゼワインの老舗、エスタンドンのブース。こちらのロゼも大好きです。

思い出のチーズケーキー20世紀のリッチテイスト

今まで食べた中で一番美味しかったチーズケーキ。母が持っていたお菓子の本に載っていたレシピです。チーズ風味のスポンジ台の上に、チーズクリームとメレンゲを混ぜた種を重ねて焼きます。甘味を抑えた濃厚な味。チーズクリームは、まずカスタードクリームを作り、それをすりおろしたエダムチーズと卵の黄身を混ぜて作ったシュー種に加えて仕上げます。そこに卵の白身をもったりするまで攪拌して砂糖を加えたメレンゲを混ぜ合わせる。それをスポンジ台に乗せて焼き、焼きあがったら洋酒で溶いたあんずジャムを塗って完成。これがたまらなく美味。子供の頃、まずはこの写真に憧れました。ダイヤモンドリナーなんてチーズおろし器、当時は見たこともなく、買ってもらった時はそれはそれはうれしかったものです。エダムチーズという名もこの本で初めて知りました。アプリコットジャムというのもおしゃれな感じで、女の子の心に響いたのでしょう。(杏里のデビューアルバムのタイトル・そういえばアプリコットジャムでした( ^)o(^ )10代、お菓子作りに目覚めてから何度このチーズケーキを作ったことでしょうか。初めて食べたチーズケーキがこの濃厚な味だったせいか、どうしてもレアチーズケーキは受け付けませんでした。友達はレアの方が好きという子が多かったけれど。

昭和のお菓子のレシピ本って概してカロリー計算度外視というか、今見ると作らない方が身のためと思われるリッチテイスト。でもとにかく凝っていて、簡単に作れるものではないところが風格を感じさせます。チーズケーキと言えば昭和の末頃に爆発的に流行したティラミス、私はあまり好みではありませんでしたが、知り合いのイタリア人が、名前の由来はあまりに美味しくてハイになるからだと教えてくれました。赤坂・グラナータのティラミス人気でしたね。最近もニューヨークチーズケーキを始め、チーズケーキは相変わらずの隆盛ぶりを見せていますね。コンビニのスイーツ売り場にも必ずあるアイテム。チーズ党って多いんですね。

長じてからはお酒を飲むようになり、スイーツからは遠ざかりました。今ではチーズはワインのお供で、好みもシンプルテイストのサムソーやコンテから、濃厚なマンステール、エポワスまで幅広くなりましたが、なぜかお菓子に加工されたものは苦手になりました。もうチーズケーキを作ることもないでしょう。でもあのチーズケーキは母と一緒に作った思い出の味であり、レシピ本の重厚な雰囲気と共に忘れられません。

キャロットハルーワ 入江麻木さんのレシピが恋しい

日本人が嫌いな野菜の上位にランキングされるにんじん。私もあの甘さが苦手で、惣菜として食べるのは好きではありませんでした。そんな向きには打ってつけの食べ方だと思われるのがこちら。インドの伝統的なスイーツだそうです。思い起こせば、小澤征爾夫人のヴェラさんのお母様である料理研究家の故・入江麻木さんのお菓子の本で紹介されていました。名前は確か本場インドのものだった気がしますが、実際作ったことはありませんでした。恐らくにんじんのお菓子というだけで及び腰になったのでしょう。いま何が残念ってその本がもう手元にはないのです。入江麻木さんは昭和のころそれはそれは素敵なお菓子の本を出していて、子供だった私にはおとぎ話の世界の案内人のように思えました。彼女のレシピに従ってお菓子作りに挑戦しましたが、完成品は本に載っていた写真とはあまりにもかけ離れていて自信をなくしました。昭和のお菓子作りの本は概して本格的で、気軽に入っていける世界ではなかったのですね。その中でも入江麻木さんのお菓子は芸術性がものすごく高かったと思います。

私が作ったキャロットハルーワは、すりおろしたにんじんをバターで炒め、牛乳と砂糖、カルダモンを加えて煮つめ、レーズンと好みのナッツを飾るというシンプルなもの。でも美味しさこの上なし!とてもにんじんとは思えません。カルダモンって言葉の響きといい香りといいファンタスティック♥ただ普段あまり使う機会はないので、賞味期限中に使いきれないのが残念です。好みでコンデンスミルクを加えるレシピもあった。入江さんのレシピでは最後に銀箔を飾ったはずで、何ともおしゃれで子供心に感激した記憶がある。大量のにんじんを消費したいときなどよく作る。冷やしても美味しいが、私は出来たてが好き。入江さんのレシピを再現してみたいと切に思う。

ばくれんー死語に再会した感激、日本酒の名前です

莫連、と書きます。すれっからしの女性を指す言葉。明治時代あたりに使われたのでしょうか、実際耳にしたことはありません。欲望という名の電車の主人公、ブランチを評して誰かが書いた文章で初めて知りました。今は聞きなれない言葉なので気軽に使えて面白い。あの人もなかなかの莫連で・・・と貶しても、誰も気づかないでしょう。すれっからし、もほとんど死語のように思えますが、そう形容するより莫連を使った方が隠語度が高いですね。それが先日、某所でばくれんという山形の日本酒を飲み、まさか莫連の意味?とラベルを見ると、酒をあおる浮世絵風の女性のイラストが。ひっそりと、でも脈々と生きている言葉なのだと実感しました。

言葉は時代につれ、その言葉に付与された価値が消滅すれば使われなくなるのでしょうが、いわば言葉のシーラカンス、死語の歴史は興味深いものです。風情のある言葉も多いので時々こっそり使ってみたくなります。死語と意識せずに使う人のずれ感も面白い。数十年来の友人は、ご両親の影響か、昭和の死語を平気で使い続けます。胸の豊かな人をボイン、新しい服をおニュー、地に足がついていない人を夢見る夢子さん・・・ってこれかなり昔のボキャブラリーです。死語と気づかない感性、一種の鈍感力もなかなか凄いと思います。時代を先取りする感性が魅力的なのと同様、彼女の、時代の空気に全く鈍い感性も私にとっては魅力的です。死語はそんな人々によって支えられているのかもしれませんね。思いがけないばくれんとの出会いのように、いつかまた忘れている死語と出会えたら感激です。

激辛foodに憑かれてー激辛愛好家界のフレッド・アステアと勝手に自負

激辛foodが大好き。と言っても食べ歩きの趣味はないので激辛の味を新規開拓するわけでもなく、いつも決まった店に行くばかり。まずはココイチの10辛。さらに辛みパウダーを振りかけてカスタマイズを楽しむ。店舗数が多いので、どこでも気軽に食せることがココイチの魅力。それからヤミツキカレー。昔の職場の近所にあったので、一時は週三ぐらいの割合で利用していた。激辛でもそんなに辛くはなく、カスタマイズ用の辛みは置いていないが、ラッキョウの食べ放題が嬉しい。さらに激辛を求めて、蒙古タンメン中本の北極ラーメン。今はいつも北極の4倍を食べるが、汁物だけあってかなり辛さが身に染みる。みなさん、汗と鼻水と格闘しながら召し上がってる感じ・・・ところがわたしは激辛を食しても汗をかかない。20世紀ハリウッドに、フレッド・アステアというミュージカルスターがいた。彼はタキシード姿で一切汗をかかずに激しいダンスを踊り、エレガンスの極みと称賛されていた。なので自分も激辛愛好家界のフレッド・アステアと勝手に自負している!(^^)!

他にも激辛を供する店にはいろいろお邪魔しているものの、上記の3店が私の激辛食の聖地か。自宅では、レトルトの大辛カレーにサドンデスソースを小さじ一杯入れて食べるのが好き。辛さが和らいでしまうので白米はなし。それも至福のひと時・・・サドンデスソースはラベルのMade with great karmaって表記がいい。