獅子座の女シャネル

フランスの小説家で外交官でもあったポール・モランが描くシャネル像。日本で出版されたのはもう45年近く前のことなんですね。シャネルの香水のボトルをイメージしたような表紙がお洒落です。私がココ・シャネルの名前を初めて知ったのは、シャネル社の美容部長?として来日したフランソワーズ・モレシャン女史のプロモーションでだと思います。当時彼女は日本の女性に対する色々なアドバイスを本にしていました。それを私も読んで・・・そこにシャネルに関するさまざまなエピソードが語られていたのです。一番印象的だったのは、晩年のシャネルのワードローブのこと。住まいにしていたリッツホテルにはシャネルスーツ2着にスカーフとか何とか、ほんの数えるほどの衣裳しかなかったということで、服をたくさん揃えることがお洒落だと信じていた身には衝撃的でした。なんてかっこいい・・・最近はミニマリスムなど流行っていますが、当時は景気も右肩上がりの大量消費時代ーなんでも持ち物の数を増やすことがリッチの証といった風潮がありましたからね。フィリピンのマルコス大統領夫人・イメルダさんの膨大な靴コレクションとか、君島十和子さんのフェラガモコレクションなど思い出します。

で、肝心のこちらの本の話ですが、ヨーロッパの名だたるセレブたちと交流のあったシャネルの人生とその哲学を語っています。私はバレエリュスを率いた天才興行師・ディアギレフのファンなのですが、シャネルは彼とも親交が深かったのですね。シャネルによると彼は、頑固で、寛大で、けちで、そのくせ急に浪費家になるという矛盾の塊。ヨーロッパ中を芸術の擁護者として駆け回りながら、常に一文無しで、死んだときに残したものと言ったらカフスボタンだけだったと言います。これもかっこいい死にざまですね。シャネルは何かを所有することが大嫌いと語っていますが、ディアギレフとはそういう点でも価値観を共有できたのかもしれませんね。

そしてまた印象的なのが、一時シャネルと恋愛関係にあったウエストミンスター卿のエピソード。ウエストミンスターはエレガンスそのものだったが、そのくせ新しいものなど何一つ身に着けておらず、ジャケットなど25年も同じものを着ている始末だったのだそう。それだけいいお品だったということでもありましょうが、エレガンスの真髄に触れている話だと思います。昔、イギリスの貴族は新品の靴を履く前に、まず庭師に履かせて、程よく革がなじんでから自身で着用したという話を聞いたことがあります。確かに高級品と言うのは新品の時は見られたものではありませんものね。金ぴかの成金趣味って感じです。美しく古びた時に本物のエレガンスが醸し出される気がします。

ファッションの一大帝国を築いたシャネルが、高価な布地以上に、価値ある宝石をつけたからと言って、それで女が豊かになるわけではないと言っているのが興味深い。20世紀のフランスの小説家マルグリット・デュラスはその著書”L’amant”で、女を美しくさせるのは高価な化粧品や衣服ではないと書いていましたが、共に慧眼だと思います。他にも富について、モードについて、シャネルの哲学が展開されています。何につけ、この人は物事の本質を見抜く天才だったのでしょう そしてすごく意外だった一言-グレタ・ガルボはスクリーン上における最も素晴らしい女優だったが、着こなしの点では最もいただけない女だったーガルボの映画ってそんなに見たことはありませんが、今度ぜひその着こなしを見てみたいと思いました。

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