モテる男の人

もう20年以上も前に一世を風靡した、失楽園の映画を観ました。当時はいわゆる婚外恋愛にも寛容だったんですね。死に最も近いところに究極の快楽があることを描いている点で、渡辺淳一は三島由紀夫の憂国を意識したのかと思ったら、有島武郎の心中事件がモデルだそうですね。失楽園の二人の道行は軽井沢ですが、そういえば軽井沢で有島武郎終焉の地って碑を見た記憶があります。

この小説が流行ったの凄くよく分かります。日経新聞の連載で、そこにはターゲット読者と思しき中年男性が夢見そうなことの全てがあったのですもの―美女とのデート、旅行、グルメ。50を過ぎ、会社で閑職に追いやられた男性の悲哀というのも共感を呼んだのではないでしょうか。で、映画版で、役所広司演じる主人公の男性が、あ~これはモテる男性の台詞だなとしみじみ思わせる言葉を吐くのです。

相手の女性が鴨とクレソンの鍋が好きと言う。鴨とクレソンって人によっては苦手な取り合わせにも思えますが、彼はすかさず、俺も好きになる!と言うのです。“あ~俺それダメ”とか”俺はちょっと”ではなく、ポジティブでいい返答だと思いませんか。例えばデブ、ではなくふくよか。変な顔、ではなく個性的。派手、ではなく華やか。少しでも肯定的な響きのある言葉は人を幸せにします。あの映画で一番印象的だったのは個人的にはそのシーンでした。

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